講演会:学校法人日本大学の一連の事件と諸規定の課題
NPOアジア環境・エネルギー研究機構第3回研究会(2021年度)
日 時
2022年3月19日(土)15:00~17:00
報告テーマ
学校法人日本大学の一連の事件と諸規定の課題
報告者
田村八十一氏(日本大学)、村井秀樹氏(日本大学)
司 会
小阪隆秀氏(日本大学)
趣旨:(「報告テーマ」をめぐる予備的説明)
私立大学の一連の不祥事のなかで、日本大学はその規模の大きさから社会的に深刻な影響を及ぼしている。「いわゆる日大問題」として、大学の不祥事の枕詞として使われるほどである。
「日大問題」が世間の注目を引き、批判を浴びるようになったのは、「日大アメフト悪質タックル問題」である。世間的には、これが日大問題の前兆であり、その時のアメフト部監督が内田正人常務理事、コーチが井ノ口忠男理事である(アメフト部部長は加藤直人理事)。田中英寿理事長は「わしの知らないことだ」と社会への謝罪をせずに逃げ切った。
しかし、その3年後に、今回の不祥事が発覚し、井ノ口忠男理事と薮本雅巳「医療法人・錦秀会」前理事長が逮捕された。彼らは日大に多額の損害を与えていたが、その一部を田中理事長に渡していたのである。そして、田中理事長は、脱税の容疑で逮捕・起訴された。この3者には深い組織的な繋がりがあり利害を共有するとともに、学校法人日本大学に大きな損害を与え、その名誉を著しく毀損してきた。
日大問題が社会から厳しく批判される理由は、企業などの社会的組織の不祥事のレベルを超えているからである。日大は、日本の私立大学の中で2番目に高額の補助金(私学助成金)を受け取っているからである。それは、約90億円に上る国民の血税である。私立大学を所管する文部科学省は、一連の不祥事の象徴ともなっている日本大学を見過ごすことが出来ず、厳しい「指導」文書を、加藤新理事長宛てに発出した。
「指導」文書の主旨は、【捜査へ全面協力し、自らも事実関係と真相の究明のために徹底調査し、その調査結果と改善方策を速やかに報告し、社会への説明責任を果たすことを求めてきた。しかしながら、日本大学は、問題の背景や全体像を明らかにせず、具体的な再発防止策も何ら示さず、社会から納得を得られる対応や説明をして来なかった。よって、次の7つの事項を「確実に実施」し、「具体的な対応状況」を報告せよ。】というものである。文科省が要求する7つの事項(省略せざるを得ないが)の内容は非常に厳しいものである。
そして今、私立大学全体に対する組織体制の見直し・ガバナンス改革が重要な社会的課題に上っている。しかし、そのための議論は利害の対立をはらみつつ、迷走状態にある。